Suica・PASMO・ICOCAなど交通系ICカードの普及で回数乗車券(以下 回数券と略します)を利用する方が少なくなっているように見受けられます。
回数券の特徴と言えば割引があることです。交通系ICカードによってはポイントが付与されるものもありますが、購入時に割引されている回数券のほうがお得に鉄道を利用することが出来ます。
このページでは回数券の有効日数や払い戻しなど基本的な部分から、特殊な回数券についてまで回数券のあれこれを見ていきます。
※このページで取り扱う回数券は回数乗車券で新幹線の回数券等は取り扱っていません。
回数券は10枚分の料金で11枚が基本です
鉄道事業者によって回数券の発行スタイルが異なっていますが、1枚ずつばらばらの切符スタイルで発行されるタイプが主流で、昔ながらの綴られていてミシン目で切り取るタイプや、カードタイプのものもあります。
ここでは主流の切符スタイルとして話を進めていきますが、回数券の内容は綴られているタイプもカードタイプでも同じです。
一般的に回数券は普通運賃の10倍の料金で11枚発行されます。
たとえば200円の区間ならば2000円で11枚発行されるので、1枚あたり約182円で割引率は約9%になります。
鉄道事業者によっては20倍の料金で22枚発行されるタイプの回数券を扱っていますが、割引率などは一般的な回数券と同じで、何度も購入する手間を省くための回数券です。
鉄道事業者の中には10倍の料金で12枚発行、10倍の料金で13枚発行といったケースもありますし、小田急では10倍の料金から約10%割引して10枚発行される「小田急チケット10」、JR四国では6倍の料金から10%割引して6枚発行される「6枚回数券」というものもあります。
また回数券を発売していない鉄道事業者もあり、回数券の代わりに交通系ICカードで乗車するとポイントが貯まる札幌市営・仙台市営・名古屋市営・名古屋鉄道(名鉄)・福岡市営(SAPICA・icsca・manaca・はやかけん)や、プリペイド式のカードで10%のプレミアムが付与される大阪メトロ(回数カード 3000円のカードで3300円使用できるなど)のような例もあります。
JR西日本の特定区間で発行される回数券
金額式の回数券
一般的に回数券は発着駅を指定(利用区間指定式)して発行されるのですが、都営地下鉄・東京メトロ、東急電鉄や関西の鉄道事業者などでは駅を指定した回数券ではなく金額式の回数券(区間運賃額面式)で発行されています。
発着駅が指定されていない金額式の回数券ですから、阪神電車の回数券ならば阪神大阪梅田でも尼崎でも甲子園でも阪神神戸三宮でも任意の駅から乗車でき、券面記載の料金区間まで乗車することが出来ます。
画像出典東京メトロ
時差回数券と土曜休日回数券
関西や関東の鉄道事業者などでは時差回数券や土曜休日回数券が発行されています。
時差回数券は平日の10時から16時の使用に限定した回数券で、多くの事業者では土曜日や日曜祝日の終日も利用可能としていますし、一部の事業者では土曜休日ダイヤ適用日(お盆など)も終日利用可能としているケースもあります。
通常の回数券は普通運賃の10倍の料金で11枚発行されますが、大半の時差回数券は普通運賃の10倍の料金で12枚発行されますので、例えば200円の区間ならば2000円で12枚発行ですから、1枚当たり約167円で約16%も割引されています。
土曜休日回数券は土曜日や日曜祝日のみ使用できる回数券で(一部の事業者ではお盆など土曜休日ダイヤ適用日も終日利用可能)、大半の土曜休日回数券は普通運賃の10倍の料金で14枚発行されますので、例えば200円の区間ならば2000円で14枚発行ですから、1枚当たり約143円で約28%も割引されています。
時差回数券の10時~16時の疑問
時差回数券は平日の10時から16時の間で使用できると書きましたが、この10時から16時とは駅に入る時間なのかそれとも駅から出る時間なのか、また10時00分の電車に乗るためには駅に入るのは10時より前だけどこういうときってどうするの?という疑問がわいてきますよね。
まず10時から16時というのは駅に入る時間を指しています。
16時までに駅に入ればOKで、降りる駅では17時になっていても問題ありませんし、自動改札が閉まってしまうことも基本的にはありません。
もし自動改札が閉まった場合は、駅員に時差回数券を渡して駅を出てください。
10時00分の電車に乗るには10時前には駅に入っていないと乗れないのですが、時差回数券の決まりでは10時前に改札を通ることはできません。
しかしこれでは問題があるため、9時55分くらいになると改札を通れるように設定していることが多いです。
各駅の自動改札の設定によるので、駅によっては9時50分くらいに通れる駅もあれば直前にならないと通れない駅もあるようです。
回数券はどこで買う?
回数券は発駅または着駅の窓口または券売機で販売しています。
発駅または着駅が無人駅の場合は、近くの駅員が配置されている駅で発売しています。
JR東日本では近距離用の券売機での回数券の発売は終了し、指定席券売機やみどりの窓口での発売に切り替えています。
JRの回数券は200㎞までの任意の区間を購入することが出来ます。
(駅長等に認められたら300㎞まで)
なお100㎞以上の回数券であっても途中下車はできません。
利用区間が指定されていない金額式の回数券の場合、任意の駅の券売機で購入することが出来ます。
例えば南海のなんばから堺東までは260円ですから、和歌山市でも関西空港でも好きな駅で260円区間の回数券を購入すればOKです。
回数券はクレジットカードで購入できる?
いまやキャッシュレスが当たり前の世の中になりましたが、回数券の購入についてはJRではクレジットカードが使用できます。
みどりの窓口・指定席券売機・みどりの券売機などクレジットカードで切符の購入が可能な窓口や券売機で回数券を購入するさいにクレジットカードで決済しましょう。
これに対して私鉄などJR以外の鉄道事業者では、回数券は現金での購入のみとなっていることがほとんどです。
定期券の購入ができる券売機だとしても定期券以外の購入は現金のみになっていますし、特急券などを販売している駅の窓口でも、回数券は現金のみというケースがほとんどです。
回数券の有効日数
回数券は一部の鉄道事業者を除き3か月間有効です。
例)3月28日に購入した回数券は6月27日まで有効
新京成電鉄・江ノ島電鉄(江ノ電)・小田急(小田急チケット10)など一部の事業者の回数券の有効日数は2か月となっています。
例)3月28日に購入した回数券は5月27日まで有効
一部の関西の私鉄などでは購入月の翌月から数えて3か月目の末日まで有効としているケースがあります。
例)3月1日に購入した回数券は6月30日まで有効
例)3月31日に購入した回数券は6月30日まで有効
回数券の払い戻しと区間変更
回数券の払い戻しですが、残っている回数券の枚数ではなく使用した枚数を元に計算します。
使用した枚数×該当する普通運賃+220円の払い戻し手数料が差し引かれて払い戻されます。
・180円区間の回数券(1800円)を払い戻す場合
例)9枚使用後 9枚×180+220円=1840円
1800円-1840円=-40円
購入額のほうが低いため払い戻し金額はありません。
例)8枚使用後 8枚×180+220円=1660円
1800円-1660円=140円
この例では残った回数券3枚を払い戻した場合140円戻ってくることになります。
回数券には区間変更という制度がありません。
手持ちの回数券を払い戻して、別の区間の回数券を購入することになります。
回数券で乗り越す場合
・一般的な発着駅が指定された(利用区間指定式)回数券の場合
JR横浜からJR川崎までの回数券でJR品川まで乗り越す場合
横浜から川崎まで220円
川崎から品川まで220円
横浜から品川まで300円
発着駅を指定した回数券で乗り越し場合には、差額ではなく別途料金となります。
ですので差額の80円ではなく、川崎から品川までの220円が必要となります。
JR横浜からJR品川までの回数券でJR上野まで乗り越す場合
横浜から品川まで300円
品川から上野まで200円
横浜から上野まで570円
この例でも差額ではなく別途料金となるので、品川から上野までの200円が必要になります。
差額だと270円が必要ですから別途料金のほうが安い例もあるのです。
・金額式の回数券(区間運賃額面式)の場合
京阪電車の祇園四条から京橋までの410円区間の回数券を所持していて淀屋橋まで乗り越す場合
祇園四条から京橋まで410円
京橋から淀屋橋まで160円
祇園四条から淀屋橋まで420円
金額式の回数券(区間運賃額面式)の場合は差額精算となりますので、祇園四条から淀屋橋までの420円から祇園四条から京橋までの回数券410円区間の差額10円が必要となります。
回数券の販売を終了する会社が増えています
2020年ごろから回数券の販売を終了する会社が増えており、JR全社のほか、多くの私鉄で回数券の発売をやめています。
今後もますます回数券の販売終了の波は広がり、近いうちに鉄道から回数券が無くなる日がやってきそうで、回数券を使ったお得な乗車方法も風前の灯火となっています。