メダカや金魚などを飼っている方にとっては当たり前の話かもしれませんが、メダカや金魚などを飼う場合の水は塩素・カルキを抜かなければ使ってはダメ。
水道水に含まれる塩素によって命を落とすことがあると、ほぼすべてのサイトで書かれていますよね。
ところが水替えの際にカルキ抜きを行わずに水道水をそのまま入れても、メダカたちは翌日以降も元気に泳いでいる。
こんな経験をされた方も多いことでしょう。
塩素が含まれる水道水をそのままメダカ飼育に使った場合にどのような影響が出るのかを見ていきましょう。
カルキって塩素のこと?
水道水から塩素を抜く作業のことをカルキ抜きと一般に呼んでいて、塩素=カルキ というイメージがあると思いますがこれ実は違うそうなのです。
カルキとはドイツ語のクロールカルキという言葉からきていて、昔はプールの消毒用に白い固形物を放り込んでいたのをご存じの方もいらっしゃると思いますが、あの固形物がカルキなんです。
カルキとは次亜塩素酸カルシウム(水酸化カルシウムに塩素を吸着させたもの)のことで、水に放り込むと塩素が発生してプールの水を塩素消毒できるのです。
ちなみに・・・
洗車後などに水道水が蒸発して白く残るものは炭酸カルシウム(石灰)などです。
以前は水道水の消毒にカルキが使われていたようですが、現在では次亜塩素酸ナトリウムが主流です。
カルキを水道水の消毒として用いていたとしても、水に放り込むと塩素が発生するわけですから蛇口から出る水にカルキ(次亜塩素酸カルシウム)は含まていませんから、元々カルキ抜きという言葉自体が間違いなんです。
でもこれだけ定着した言葉になっていますから、カルキは含まれていなくても「カルキ抜き」という言葉は生き続けるのでしょうね。
塩素はメダカにどのような影響を及ぼすのか
メダカにはエラというものがあり、水がエラを通過したさいに水分中に含まれる酸素を取り込みます。
エラは真っ赤な色をしていますがこれは血液の色で、エラから取り込んだ酸素は赤血球中のヘモグロビンと結びついて運ばれていきます。
ところが塩素はヘモグロビンと結びつきやすく、さらに塩素と結びついたヘモグロビンは塩化ヘモグロビンへと変化してしまい、もう二度と酸素と結びつことはできません。
するとエラから取り入れる酸素量が極端に不足してしまい、メダカは水面に口を出してパクパクすることで酸素を得ようとするのです。
人間でも塩素によって皮膚の表面が溶けだすことでガサガサになったり逆にツルツルになったりするのですが、メダカの場合はエラが損傷してしまう原因にもなってしまいます。
やはりメダカにとって塩素は毒なのだということですね。
少量の塩素でもメダカは死んでしまう?
北海道大学の淡水魚に対する残留塩素の連続通水による毒性試験という論文を参照して説明します。
この試験では、どの程度の塩素濃度で試験に用いられているメダカの半数が亡くなるかという半数致死濃度(LC50)をもとめています。
この試験結果によると、塩素濃度が1.5mg/Lで4時間、0.7mg/Lで8~12時間、0.6mg/Lで12~24時間で半数のメダカが亡くなったというデータになっています。
蛇口から出る水道水の残留塩素濃度は0.1mg/L以上必要だということが水道法という法律で定められており、厚生労働省の「水質管理目標設定項目と目標値」では1mg/L以下となっています。
雑菌に侵されやすい梅雨から夏の水道水っていつも以上に塩素のニオイが気になるように、季節によっても塩素濃度は変化しますし、各地の水道局によって低めの所もあれば高めの所もありますが、蛇口から出る水道水の塩素濃度はおおむね0.1mg/L~0.6mg/Lといったあたりのようですが、基準値ギリギリの1.0mg/Lの塩素濃度である可能性もあります。
実験結果からは塩素濃度が0.6mg/Lで12~24時間で半数のメダカが亡くなることから、水道水の塩素のニオイがきついと感じる時期はカルキ抜きを行わなければマズいことになるかもですね。
水替えは1/3程度にしないと水温や水質(pH)の急激な変化にともない、メダカには相当な負担がかかり亡くなることもあります。
1.0mg/Lの塩素濃度の水道水をカルキ抜きを行わずに水替えに用いた場合、全体の1/3の量であれば算数的には塩素濃度は0.33mg/Lと低くなります。
筆者は60L水槽で10L以下の水替えの時や、蒸発して減った分を加えるときにはカルキ抜きをしていない水道水を使っていますが、それ以外の時は今では必ずカルキ抜きを行った水道水を使用しています。
カルキ抜きを行っていない水道水で水槽の半分の飼育水を交換して、翌日までにかなりの数のメダカを亡くしたという苦い経験をしたことがあるからです。
それと水をきれいに保つ役割を担っているバクテリアにも、塩素は少なからず影響を及ぼすのではないかと。
たとえば立ち上げてすぐの水槽ってまだバクテリアが少ないために白く濁ったりしますが、水替え時に塩素が含まれている水を使っても同じように白く濁ることがありますよね。
これって塩素によって増加してきたバクテリアを殺してしまう(消毒する)ためではないかと、個人的に思っております。
少量であっても塩素はメダカにとって毒であるということに変わりありませんので、できるだけカルキ抜きを行った水を使用しましょう。
蒸発などによって減った分だけ水を加えるなど少量の時には、水道水をそのまま使用してもメダカにはあまり影響はないようです。
ちなみに実験結果から、メダカはヤマメやニジマスより塩素に強いが金魚ほどではないとなっています。
水道水の塩素を抜く方法(カルキ抜きの方法)
いま最もメジャーなカルキ抜きの方法と言えば、市販されているカルキ抜き剤を使用するものです。
水道水に規程の量を入れるだけ塩素が抜けるのですから手軽で便利です。
塩素と一緒に重金属などの除去やエラの保護成分が入っているエーハイム 4in1やテトラ パーフェクトウォーターを使えば、水質調整剤を別に購入する必要もなく便利です。
汲み置き
こちらもオーソドックスなカルキ抜きの方法で、バケツなどに水道水を入れて自然に塩素が無くなるのを待つ方法です。
日の当たる場所に置いておけば6時間くらいで塩素は抜けてしまいます。
汲み置きによるカルキ抜きですが、たとえばペットボトルに水道水を満水状態にして蓋を閉めて密閉状態にしておいても、太陽光(紫外線)に当たっていれば塩素は6時間程度で消失してしまいます。
塩素は蒸発して無くなるのではなく、化学反応によって変化するようですね。
同じ状態で日の当たらない室内に置いていた場合、塩素が無くなるまでには2~3日程度かかります。
最近は家庭の窓ガラスでもUVカットのものがあり、部屋の中で太陽光が当たる場所に置いていたとしても、ガラスによってUV(紫外線)カットされちゃうと塩素が消失するまでには相当時間がかかるかもしれません。
水を振ったり、勢いよくシャワーで出したり
ペットボトルなどに水道水を入れて激しく振ったり、シャワーで勢いよく出した水道水って塩素は残っているものでしょうか?
これらの方法では塩素を完全に除去することはできず、おおむね半減させる程度にとどまるようです。
これらを組み合わせて、シャワーで勢いよく出した水道水をペットボトルに入れて激しく振れば、もう少し塩素は減ると思われます。
レモン果汁
レモン果汁を水道水に入れて飲むと、塩素のニオイがせず美味しく飲むことができますよね。
レモンに含まれるビタミンCによって中和されて塩素が消失するためです。
レモン1個に含まれるビタミンCの含有量は100㎎あるそうです。
水道水の塩素濃度が1mg/Lのとき、レモン1個で約40Lの水道水を中和して塩素を除去することができる計算に。
ただし飼育水がレモンによって急激に酸性に傾くという水質の急変によって、メダカへの影響が大きいことからおススメはできない方法です。
ビタミンC入りの飴を溶かし入れる
ビタミンCが入った飴(レモン味ののど飴など)を水道水の中でこするようにして溶かすと、塩素が消失すると言われています。
実際に実験を行ったサイトが複数あり、塩素が消えたそうですしpHの変化もないそうです。
ただしこの方法でカルキを除去した水をメダカの飼育水として使うことはお勧めしません。
飴には砂糖などの糖分が入っており、この糖分によって菌が増殖して数日で水が白く濁ってしまうのです。
おそらくですが、水をきれいに保つためのバクテリアが減少するのではなく、通常はあまり増えることがない菌(酵母など)が糖分によって一気に増殖するためと考えられます。
水槽内の水のバランスが崩れることからメダカに影響が無いとは言えませんので、この方法は避けた方が良いでしょう。
浄水器
浄水器と一口に言ってもさまざまなタイプのものがあり、据え置き型やビルドインタイプに蛇口に取り付けるタイプなどなど。
浄水器によって性能は違うと思いますが、例えばもっとも手軽に導入できる蛇口に取り付けるタイプの場合、塩素の除去率はおおむね80%となっていて完全に塩素を取り除けてはいないようです。
据え置き型やビルドインタイプの場合はもう少し塩素除去率は高いと思いますが、メダカの水に使用される前に取扱説明書などで塩素除去率を確認してから使用してください。
さいごに
水道水に塩素が含まれているのは水が傷まないようにするためですが、塩素がメダカにとっては毒なのは間違いありません。
また塩素の殺菌作用によって水槽の水をきれいに保つためのバクテリアまで殺してしまう可能性があり、きちんと塩素の除去(カルキ抜き)を行った水を用いることが大切です。
ただし蒸発した分だけ水を加えるなど、少量の時は水道水を直接入れても特に問題はありません。
塩素を除去するにはカルキ抜き剤を使用するか、汲み置きによって塩素を除去しましょう。