春先から秋口にかけてメダカたちの産卵シーズンが続きます。
せっかく卵を産んだのですからふ化させてみたい、育ててみたいと思いますよね。
おおまかにはこちらの記事(失敗せずにメダカの卵をふ化させよう!稚魚を育ててみよう! )にまとめていますが、ここではメダカの卵をふ化させて育てていくうえでの注意点や簡単な飼育方法について書いています。
専門的に育てておられる方に比べれば雑かもしれませんが、筆者が数十年にわたって改良しながら実践してきたもので、はじめてメダカの卵をふ化させて育てる方にとっても簡単な内容になっています。
卵は色素剤入りの水をタッパーに入れて
以前は卵を採集してタッパーに入れた色素剤の入った水道水に1日入れていましたが、最近は水道水だけが入ったタッパーに卵を入れています。
色素剤とはメチレンブルーやマラカイトグリーンで、メダカが白点病など病気になったときに使う薬剤なのですがとりあえず1本持っておくと便利です。
卵を採集して色素剤入りの水道水につけておくと、無精卵は色素剤の色に染まっていたり真っ白になっているので取り除きます。
透明感を保って指で挟んでも潰れない卵が有精卵ですから、その卵だけをキープします。
この色素剤に入れる工程を最近は省いて、最初から水道水のみのタッパーに入れることがほとんどです。
水道水の塩素によって水カビの発生を防ぐことができるのですが、色素剤を使わなくても無精卵は白くなるので見分けがつきますし。
ふ化率もほとんど差はないように思いますが、確実に有精卵を見分けて水カビ対策を考えるならば色素剤に1日つけるほうが良いでしょうね。
卵の中にメダカの目などが分かるようになるなど、ふ化のタイミングが近付いたころにはタッパーから稚魚飼育用の容器(バケツなど)へ引越しです。
でも最近はタッパーの中で泳ぎ始めてからバケツに移すことが多いかな。
ちなみに卵の入った容器の水道水は、毎日または2日おきに取り換えてください。
水道水に含まれる塩素は、屋内でも1日程度で抜けてしまいます。
とにかく卵にカビがはえてダメにならないようにしましょう。
卵がまったく孵化しない
タッパーなどの容器に卵を入れて、ほぼ毎日水道水を取り換えておれば、カビなどによって卵がダメになることはほぼありません。
筆者は一時期、採集した卵を水草が入ったバケツに入れて孵化させ、そのままメダカを育てていました。
水も換えないし、孵化してもそのまま育てるだけですから楽ですけどね。
ただし水の状態が悪いと、卵はカビが生えたり腐ったりして全く孵化しないこともあります。
卵の中で目が分かるほどに育ったのに、腐ってしまって孵化しないこともありました。
メダカの卵が孵化しない理由として考えられるのは、水の状態があまりにも悪いということが大きいと思います。
孵化してからのメダカには水道水は毒ですが
孵化するまでのメダカの卵にとって水道水は薬と言えると思います。
稚魚を育てるには底床はいる?いらない?
メダカの稚魚は底床に砂利などを使っていると挟まれる形で死んでしまう・・・
実際に挟まれるのかは分かりませんが、ただ稚魚を育てていく上では底床が入っていると不都合なことがあります。
メダカの稚魚は水流にも弱いし、成魚以上に水質や水温などの急激な変化には弱いと言われています。
そのため底に溜まったゴミをスポイトで吸って除去して減った分の水を加えるのですが、底床が入っているとゴミをピンポイントで吸い取ることが出来ません。
その反面底床が入っていないとバクテリアの量がどうしても少ないため、水質の悪化が早まります。
稚魚にとっては水質の悪化もやはり避けたいところ。
2021年は底床(砂利)アリとナシのバケツを並べて稚魚の様子を観察しているのですが、砂利が入っているバケツのほうが成長も早く生き延びる率も高いようです。
両方とも週に2~3回はゴミを吸い出して水を加えているのですが、底床ナシのほうが水質が悪くなるのがやはり早く、においも気になります。
これまで稚魚の飼育には底床ナシを推してきたのですが、目の細かい砂利(大磯や珪砂)など底床を入れるほうが稚魚にとっては良い環境のように思います。
大きめの石を入れると、石と石の隙間にメダカが入り込むことがあるのでその点だけは注意してください。
稚魚ではなく成魚の水槽にカラフルなビー玉を入れていたところ、隙間に挟まれるメダカが続出したことがあります。
メダカって驚くと底床に突っ込んでしまい、動けなくなることがあるのです。
2024年は100円ショップで購入した洗い桶とボウルを使って稚魚を飼育していますが、両方ともに細かい砂利(珪砂)を底床として入れていますが、やはり成長が早いような気がします。
それに水を加える時にスポイトやチューブを使っていますが、底床に直角に触れるようにして水を入れると、稚魚は水流に巻き込まれずにすみます。
ゴミの吸出しも適当にスポイトを底床に触れさせて吸い込んでいますが、これでも十分ゴミは取れますしね。
カルキを抜いた水道水とアナカリスなどの水草
筆者は稚魚を育てるときはアナカリスを大量に入れたバケツなどを使用しています。
稚魚は屋内で育てることが多いので、屋内で日当たりがもう一つという環境でも元気に育ってくれる水草としてアナカリスを使用しています。
それに安価で入手が容易ですしね。
水は塩素などを除去した水道水を使っています。
筆者は水道水の塩素の除去にはテトラパーフェクトウォーターを使用しています。
タッパーなど水道水の中に入れられている卵の中で、黒い目が確認できるようになったころに稚魚生育場所のバケツを用意しています。
用意ができたらそろそろふ化しそうな卵の引越しです。
孵化したばかりの赤ちゃんメダカにエサは不要?
孵化したばかりの赤ちゃんメダカはお腹にヨークサック(卵嚢・らんのう)と呼ばれる栄養が詰まった袋があるので、3日ほどはその栄養を使っているのでエサはあげなくてもよい。
エサをあげてもヨークサックから栄養を取るために食べないので、水を汚すだけです。
これもよく聞く話ですね。
たしかに生まれてばかりの赤ちゃんメダカのお腹にはヨークサックが付いています。
でも私は孵化した当日からエサをあげています。
孵化した直後からエサを与えたメダカのほうが元気に育っている。
データを取ったわけではありませんが、これまでの経験から言ってそういう実感があるんですよ。
ちなみに与えるエサの量は、爪楊枝の先にエサをのせて払落し、目で見たところエサなんて乗っていないだろうというくらいの量です。
電気でもつけていればホコリのように舞うのが見える程度、というごく少量です。
一般的には指の腹にうっすらと付いたエサを払い落とす程度という感じですかね。
水替えというよりゴミの吸出し
先ほども書きましたが、メダカの稚魚は成魚以上に水質や水温の変化には弱いです。
ふ化して間もない赤ちゃんや子供ですからね。
ふつう水槽でメダカを屋内飼育している場合は水替えを定期的に行いますが、おおむね水槽の水の1/3を目安に交換します。
ところが稚魚の場合は一度に1/3もの水を換えてしまうと、急激な水質の変化によって死んでしまうものが多数出ることに。
ですので水の量ではなく底に溜まったゴミをスポイトで吸い出し、減った分だけ水をそっと入れるというのが正解です。
私は稚魚の場合はエアレーションなどに用いる細いチューブで少しずつ水を加えています。
水流を起こさないためですね。
ちなみにゴミの吸い出しの頻度は底床に(砂利・珪砂)を入れていますが、最近は1~2日おきに行っています。
また加える水はいくら少量であっても塩素などを除去した水を使用してください。
底床を入れていない場合は毎日必ずゴミの吸いしを行っていました。
稚魚へ与えるエサの量
エサはコメット赤ちゃんのエサなど市販されている安価な稚魚用の物で十分です。
どのエサを選ぶのかより、どの程度エサを与えるのかに神経を集中させてください。
筆者は爪楊枝の先に薄っすらとエサが載っているくらいの量を与えています。
稚魚のエサの袋の中で爪楊枝に乗ったエサを払落し、水の上でその爪楊枝をはじくとホコリのようにエサが舞っていく・・・そんな感じです。
電気で照らしたときに、水面に細かい粉が点々と浮かんでいるのが何とかわかるくらいで十分です。
とにかく与えすぎ厳禁です!
またゾウリムシを与えるときも、ゾウリムシを培養している液(硫黄のような匂いとか、こぼれた牛乳を拭いて乾いた後の雑巾の匂い)をあまり入れないように注意しましょう。
ゾウリムシを培養している液体はアンモニア濃度が非常に高く、メダカにとっては猛毒です。
ゾウリムシと培養液を分離することはできますがなかなか面倒ですので、10Lくらいの水に対してゾウリムシ入りの培養液は50ml程度とします。
あまり与えすぎるとメダカの稚魚がアンモニア中毒となって、もがき苦しみながら死んでいく様子を見ることになりますよ。
コーヒーのプラスチック製のドリッパーと紙製のフィルターを使い、培養液ごと入れて濾すとゾウリムシの大部分は紙フィルター内に残ります。
そこへ水を入れてからスポイトで吸い取ると、アンモニアの少ないゾウリムシが採取できます。
培養液が全て落ちる前に水を徐々に加えて、アンモニアを薄めるわけです。
エサは日に2回
筆者は朝と夕方の2回稚魚たちにエサを与えています。
中には少量ずつ5回に分けて与えるなんて書かれていますが、これまでに日に2回以上与えたことはありません。
別に日に1回でも良いと思います。
心持ち朝多めに与えて、夕方か夜には食べ残したエサを除去する。
爪楊枝の先にうっすらと乗ったエサを一振りするところを、二振りする程度。
水面を見ても細かいエサの粒が点々と浮かんでいる程度に。
食べ残したエサの除去方法は次の項目へ。
食べ残したエサを除去する
底に沈んでしまった食べ残しのエサはスポイトで吸い出してください。
浮いたままの食べ残しのエサも、いつまでも浮かんだままにせずに確実に除去してください。
浮かんだままのエサの除去ですが、小さめのコップですくったり、スポイト吸ってしまうことでも除去できますが、筆者はティッシュペーパーを浮かばせて除去しています。
2枚重ねになっているティッシュペーパーを1枚にはがし、水面にそっと浮かばせます。
この画像では片手で持っていますが、両手で浮かばせたティッシュペーパーを取り除きます。
メダカの稚魚がくっついてくるのでは・・・
と思われる方もいらっしゃるでしょうが、浮かばせたティッシュペーパーの下を稚魚たちは泳いでいますので大丈夫です。
これで食べ残したエサは簡単に除去できます。
それに水の減少を最小限に抑えられるのも良い点ではないでしょうか。
グリーンウォーター
メダカの稚魚を育てると言えば必ずと言っていいほどグリーンウォーターを勧める記事に出くわします。
実際のところ常にエサに囲まれた環境となるグリーンウォーターで育てられたメダカは、確かに早く大きくなります。
薄い緑色くらいならば稚魚の様子も分かって良いのですが、濃い緑色にまでなると稚魚の様子が分からないのが筆者にするとつまらない。
透明な水の中をゆっくり泳いだり、たまに突きあいしたり追い掛け回したり、粉末状のエサをほんの少し与えるだけで小さな稚魚たちが必死で食べる様子が見れたりと、飼うということを楽しむにはグリーンウォーターは不向きですね。
春の早い時期にふ化したメダカをその年の夏には産卵できる状態に育てるなど、品種改良のためにサイクルを早めたい方にはグリーンウォーターは必須のアイテムだと思います。
しかし筆者のようにメダカを飼うこと自体を楽しむ派にはグリーンウォーターは必要ありません。
ゾウリムシだって必須のエサではないですよ。
これまでの経験から感じるのですが
メダカをグリーンウォーターやゾウリムシなど使って早く成長させた場合、寿命もかなり短くなります。
証拠があるわけではないのですが
春にふ化してその年の夏に産卵するようなメダカって、その年の冬か翌年の春には死んでいるように感じます。
これは飼育する方の感じ方、考え方の問題ですけど、大量に飼育するというか養殖するのでなければ、市販されている安いエサでゆっくり成長させたほうが長生きするし、飼っていることが実感できて楽しいと思います。
水草を大量に入れたら夜メダカが酸欠になる?
たしかに植物は光合成しない夜間は酸素を取り入れて二酸化炭素を吐き出します。
すると水中の酸素の量が減って、メダカたちは夜間酸欠になるのでは?
これもよく言われることですね。
メダカが泳ぐ隙間もないほど水草をぎっしり入れていればに酸欠になりそうですが、元々メダカって少ない酸素量でも生きていける生き物です。
それに水草が水中の酸素をすべて取り入れてメダカの分が無くなるとも考えられず、それほど心配する必要はないです。
越冬する時には底のほうでじっとして動かず、エラもかすかに動く程度であっても春を迎えますからね。
またメダカの稚魚って体も小さいですから、それほど大量の酸素が必要になるとも思えないですし。
心配だからと稚魚の飼育にエアレーションなんてしてはいけませんよ。
いくら緩いとしても、稚魚は水の流れに疲れてしまって死んでしまいますから。