日本語って言葉・漢字の使い分けが本当に難しいですね。
ただでさえ字を書くことが少なくなってスマホやパソコンでの入力が主流となりつつあり、たまにボールペンを持ったとしても字が分からずにスマホでサッと調べて書き込むだけ。
これでは字をどんどん忘れていくばかりだし、間違った言葉や漢字を使っていても気付きもしないです。
ここでは日常でもよく使うわりに使い分けが難しそうな言葉・漢字をピックアップして、その意味とともに使い分けがしやすいようにごく簡単に分類しています。
- どの漢字を充てればいいのか?
- あう:「会う」「合う」「逢う」「遭う」「遇う」
- あける:「開ける」「空ける」「明ける」
- あし:「足」「脚」「肢」
- あらわす:「表す」「現す」「顕す」「著す」
- いがい:「以外」「意外」
- いどう:「移動」「異動」「異同」
- うつす:「移す」「写す」「映す」
- うむ:「生む」「産む」
- おさめる:「収める」「納める」「治める」「修める」
- おじ・おば:「伯父」「叔父」や「伯母」「叔母」
- かげ:「陰」「影」
- からだ:「体」「身体」
- かわる:「変わる」「代わる」「替わる」「換わる」
- きく:「聞く」「聴く」「効く」「利く」
- きてい:「規程」「規定」「既定」
- さい:「歳」「才」
- じてん:「辞典」「事典」「字典」
- ぜったい:「絶体」「絶対」
- たいせい:「体制」「態勢」「体勢」「大勢」
- ついきゅう:「追求」「追及」「追究」
- つとめる:「努める」「勉める」「勤める」「務める」
- とくちょう:「特長」「特徴」
- とし:「歳」「年」
- はかる:「計る」「測る」「量る」「図る」「諮る」「謀る」
- ほしょう:「保証」「保障」「補償」
- みる:「見る」「観る」「視る」「診る」「看る」
どの漢字を充てればいいのか?
早速ですが、小見出しに使った「充てる」ですが、よく使われるのは「当てる」ですよね。
現在では「充てる」も「当てる」も厳密な違いはないと言いますが、一般的には
充てる=他のものに合わせる、うまく振り分ける。
当てる=ぶつけたり触れさせること。
「当てる」よりも、どの漢字を選んで合わせるかなので「充てる」が正解だと思います。
あう:「会う」「合う」「逢う」「遭う」「遇う」
会う=意図的とか偶然にかかわらず2人以上の人が顔を向かい合わせる
友達に会う・出会うなど
合う=一致する、一緒になる、調和する
価値観が合う・意見が合う・助け合う・知り合うなど
「助け合う」は一緒に助ける、「知り合う」は知らない者同士が顔見知り同士になる、つまり一致するので「合う」を用います。
逢う=親しい人や好意を抱いている人に出会う
今日も彼女に逢いたい・逢引など
「会う」でも良いが、気持ちなどをより強調する場合に「逢う」を用いる。
遭う=偶然嫌いな人にあった時や嫌な出来事にあってしまう場合に用いる
嫌な先輩に遭った・実家が火事に遭ったなど
遇う=偶然好ましい事態にあう
街で芸能人に遇った・幸運に遇ったなど
あける:「開ける」「空ける」「明ける」
開ける=閉じていたものをひらける、仕切りなどを取り除く、営業開始
窓を開ける・ふたを開ける・店を開けるなど
空ける=穴を作る・よそへ移ってそのまま使わない・空間や空白を作ったり間隔を置く・容器を空っぽにしたり他の容器へ移す・何もしない時間を作る・留守にする
穴を空ける・旅館の部屋を空ける(チェックアウト)・間を空ける・水槽の水をバケツに空ける・ジョッキを空ける・しばらく家を空けるなど
明ける=ある時間や期間が終わって新しい時間や期間になる
夜勤が明ける・喪が明ける・梅雨が明けるなど
穴を「空ける」と「開ける」
「穴を空ける」は穴を作ること、「穴を開ける」は急に休んでシフトをガタガタにしたり、お金を使い込んで欠損させるなど、お金や物事を不足状態にする場合に使う。
あし:「足」「脚」「肢」
足=胴体から伸びていて体を支えたり歩行に使用する部分
骨盤からつま先までをひっくるめて「足」とあらわすのが一般的ですが、くるぶしからつま先までの部分を「足」とする場合もあります。
比喩的表現には「足」を使う。
足を洗う・足が地に付かないなど
脚=胴体から伸びていて体を支えたり歩行に使用する部分・物を支える部分
「足」とまったく同じで、骨盤からつま先までをひっくるめて「脚」と表現します。
骨盤からくるぶしまでを「脚」と表記することも。
またテーブルやいすや脚立などの「あし」も「脚」と表記します。
虫の「あし」は「脚」と表記することが多いです。
肢=「あし」と呼びますが「足」だけではなく「腕」も含みます。
医学の分野などで使われることも多く、腕と足を合わせて「四肢」といった使われ方があります。
あらわす:「表す」「現す」「顕す」「著す」
表す=感情など心の内や考えを見えるようにする、記号や色などを示すとき
気持ちを表す・図に表す・一時停止を表す標識など
現す=見えなかったものが見えるようになる、姿を出す、持っている力を表に出す
姿を現す・本性を現す・効果が現れるなど
顕す=広く世間に知らせる
功績を顕す・徳を顕すなど
「顕」という感じは常用外のために「現」を用いることが多い。
著す=書物などを書き世間に出すこと
本を著すなど
いがい:「以外」「意外」
以外=そのモノのほか
意外=予想外、思いのほか
いどう:「移動」「異動」「異同」
移動=位置が変わる、別の場所へ動かす
荷物を移動・会場へ移動など
異動=地位や職務が変わる
人事異動・住民異動届など
異同=不一致や違う点
例文の異同を調べるなど
うつす:「移す」「写す」「映す」
移す=物や人を動かす
別の口座へ預金を移す・風邪を移す・視線を移すなど
写す=カメラやビデオなどで写真や映像を撮影する・筆記具などでうつし書きする
スマホで動画を写す・教科書を丸写しなど
写真でも動画でも撮影する行為は「写す」です。
映す=光の反射で他の表面に表現したり投影する、水面や鏡に姿形があらわす
スクリーンに映す・鏡に映るなど
防犯カメラで写した映像に映っていた
うむ:「生む」「産む」
生む=この世に無かったものを新たに作る、生じさせる
利益を生む・良い結果を生む・傑作を生むなど
産む=子や卵を体外へ出す
子供を産む・メダカが卵を産んだなど
ただしこの世になかった新しい生命を誕生させるという意味で、「子供を生む」でも間違いではない。
「産む」は出産や産卵を強調する場合に用い、「生む」は広く新しいものの誕生に使われます。
おさめる:「収める」「納める」「治める」「修める」
収める=中に入れる、記録する、自分のものにする、鎮める
財布に収める・カメラに収める・勝利を収める・手中に収める・新型コロナが収まるなど
納める=(義務として)お金や物を支払う・入るべき場所に落ち着く・終わりにする
税金を納める・月謝を納める・社長の座に納まる・遺骨を納める・見納め・仕事納めなど
治める=混乱が生じないように鎮めて平和な状態にする
国を治める・治水・痛みが治まるなど
修める=身につけて習得する、行いを正す、自分を高める努力をする
学問を修める・身を修めるなど
おじ・おば:「伯父」「叔父」や「伯母」「叔母」
父や母の兄または姉の夫「伯父」
父や母の弟または妹の夫「叔父」
父や母の姉または兄の妻「伯母」
父や母の妹または弟の妻「叔母」
そして血縁関係にない年配の男性は「小父」、女性の場合は「小母」
かげ:「陰」「影」
陰=物に遮られて光や風雨が当たらない場所
影=光が遮られることでできる黒い部分、姿や形、人や物の存在を示す
ビルの陰、陰で悪口を言う、陰のある人など
月影、影絵、影武者など
「月影」は月光を遮ることでできる黒い部分だから「影」
「日陰」は日光が当たらない場所を示すから「陰」
からだ:「体」「身体」
一般的には「からだ」は「体」と書けばまったく間違いではない。
しいて言えば
体は頭や手足を除いた胴体部分
身体は心など精神状態を含めた「からだ」(心身)すべてを表す。
また「身体」は精神状態も含めた「からだ」として用いることから、身体は人間以外に用いることはあまりない。
「お体をお大事に」は体の変調だけを気遣うのに対し、「身体をお大事に」は体も心も気遣っていると取れるので丁寧な言い方になります。
かわる:「変わる」「代わる」「替わる」「換わる」
変わる=それまでとは状態や様子が違ったものになる
変化・変更・住所が変わるなど
代わる=地位や役割や立場などを別の物や人に移すこと
交代・代理など
替わる=それまであった物やことを新しく別の物やことにすること
替え歌・交替・日替わりなど
換わる=同じ価値同士のもので取り換える
換金・換気など
「交代」は代わって継続して役目を務める意味合いが強く、「交替」はシフトで複数回替わる場合に用いられる。
「両替」は同じ貨幣価値のもの同士を交換するので本来は「替」ではなく「換」のはずだが、昔から「替」が使われている。「両替」はお金を「交換」するのだが・・・
「替わる」と「換わる」で迷う場合には、一般的に用いる「替わる」を用いるかひらがな表記でよい。
きく:「聞く」「聴く」「効く」「利く」
聞く=音や声が自然に耳に入ってくる
会話が聞こえる・BGMが聞こえるなど
聴く=理解しようと積極的に耳を傾ける
好きなアーティストの曲を聴く・講演を聴くなど
先生の話は何気に聞くのではなく、理解するために聴きましょう。
効く=ききめがあった、働きがあらわれた
薬が効いた・冷房が効く・パンチが効いてきたなど
利く=能力を発揮する、何かの物事が可能となる、本来の力が発揮される
機転が利く・ブレーキが利く・学割が利く・口を利くなど
きてい:「規程」「規定」「既定」
規程=法律や規則などの一連の条項全体(フォルダ)
規定=物事や決まり、規程の中の条項(ファイル)
既定=すでに決まっている事がら(デフォルト)
さい:「歳」「才」
年齢を表す際に使う「歳」と「才」
歳=年を表す漢字
歳末、お歳暮など
才=生まれ持った能力を表す漢字
才能、天才など
本来は年齢を表す際に「才」は用いないのですが、「歳」という漢字の画数の多さから「才」が便宜的に用いています。
なので年齢を表す場合は「歳」を用います。
じてん:「辞典」「事典」「字典」
辞典=言葉の読み方や意味、文法や例文などを説明した本で決まった法則(あいうえお順など)で並べている
国語辞典・英和辞典など
事典=言葉だけではなくさまざまな事柄などを説明した本
百科事典・歴史事典など
字典=漢字の読み方や意味などを解説した本
漢字字典・書体字典など
ぜったい:「絶体」「絶対」
絶体=絶体絶命のという熟語以外では使わない
絶対=絶体絶命以外のすべての「ぜったい」で用いる
絶対絶命と間違って使わないように注意しましょう。
たいせい:「体制」「態勢」「体勢」「大勢」
体制=社会や会社のほか政治などで持続的な組織や制度や仕組みで簡単にいえばシステム
新体制・反体制派など
態勢=ある事柄に対する身構えや態度のことで、一時的・部分的な対応を示すことが多い
受入れ態勢・独走態勢など
体勢=体の構えやフォーム
不利な体勢・着陸体勢など
大勢=物事の成り行きや傾向・ほぼ決している
選挙の大勢が判明・大勢に従うなど
ついきゅう:「追求」「追及」「追究」
追求=理想や現実を追い求めること
利益の追求・幸せの追求など
追及=追いつめて責任の所在や欠点を追及すること
余罪の追及・責任追及など
※あまり使いませんが、後から追いかけて追いつくさまにも用いる
追及してくるランナーを振り払ってゴールするなど
追究=深く調べ研究する
美の追究・理論の追究など
つとめる:「努める」「勉める」「勤める」「務める」
努める=努力すること
勉学に努める・ダイエットに努めるなど
勉める=困難に耐えて努力すること
※「努める」と同義なので「勉める」はあまり用いない
勤める=仕事をすること、仏道に励むこと
会社に勤める・法事を勤めるなど
務める=引受けた役割をがんばること
議長を務める・主役を務めるなど
とくちょう:「特長」「特徴」
「特長」の「長」は長けているという意味があり、特に優れた点をいう場合に用います。
「特徴」の「徴」は「しるし」とも読み、良い悪いではなく他との区別や目立つ点をいう場合に用います。
とし:「歳」「年」
歳も年もどちらも「とし」を表しますし、どちらの字を用いても間違いになることは少ないです。
ただ「年」は年数を数える単位として捉えられるのに対して
「歳」はこれまでの経過を表すイメージがあります。
一般的には「年の瀬」「年を取る」が正解ですが、「歳の瀬」「歳を取る」のほうが重ねてきた重みを感じるので、その場面によって使い分けるのが良いでしょう。
はかる:「計る」「測る」「量る」「図る」「諮る」「謀る」
計る=数や時間をはかる
計算・損失を計るなど
測る=長さ・高さ・広さ・深さ・速さなどはかる
測定・目測・体温計で測るなど
量る=重さや容量をはかる
重量・体重を量るなど
図る=工夫をこらしたり、とりはからう
合理化を図る、便宜を図るなど
諮る=意見を求める(下の位の者に)
新型コロナウイルス感染症対策分科会に諮るなど
謀る=だます、わなにかける
暗殺を謀るなど
「図る」と「謀る」は総合的に判断する場合などの「時期を図る(謀る)」や企てる意味として「自殺を図る(謀る)」など同じように用いることもできます。
ほしょう:「保証」「保障」「補償」
「ほしょう」という言葉にどの漢字を充てればよいのか、いつも悩む筆者です。
保証=責任を伴い、その責任を請け負うもの
連帯保証人・品質保証など
保障=地位や権利を保護して損害があっても守るもの
社会保障・安全保障など
補償=損失や損害を補って償うもの
損害補償・災害補償など
みる:「見る」「観る」「視る」「診る」「看る」
見る=目で見ることはじめ、ほとんどの「みる」は「見る」と書いても間違いではない
観る=映画・演劇・スポーツなどを鑑賞する場合に用いる
テレビは「見る」でも「観る」でも間違いではないが、観るはじっくりと「みる」場合に用いることが多い。
視る=あまり用いず、「見る」を使用すれば良い
診る=医師や看護師などの診察を受ける場合に用いる
看る=看病する場合に用いる
筆者は机の上に「大きな字の常用国語辞典」を置いています。
字が大きくて見やすく、covid-19といった新語も収められています。
分からない漢字を調べるには、スマホよりこの辞典のほうがサッと調べられて便利ですよ。