元来「あおり運転」とは、前を走る車などに後部から異常接近して威圧感を与える行為です。
ところが最近は「あおり運転」の範疇を超えた異常な運転、例えば「追い越して前に無理やり割り込む」「割り込んだ上に急ブレーキをかける」「幅寄せをする」のほか「高速道路を含む道路上に無理やり停車させる」といったものも含めて「あおり運転」と一括りにした報道も多くなっています。
このページでは「あおり運転」やそれを超える異常な運転も含めて、どうすればそういった被害を受けずに済むのかを見ていきます。
あおり運転は犯罪です
まず最初に書いておきますが、あおり運転は犯罪行為です。
どのような理由があろうとも許される行為ではありません。
前車との車間距離が短すぎれば「車間距離不保持違反」(1点)として取り締まりの対象になります。
そのほかには
「急ブレーキ禁止違反」(2点)
前方に急に割り込んでおいて急ブレーキをかけるなど危険回避以外の急ブレーキ
「進路変更禁止違反」(1点)
無理な進路変更で周囲の車が急ハンドルや急ブレーキで危険を回避
「追越し違反」(2点)
左側から追い越す
「安全運転義務違反」(2点)
幅寄せ
「減光等義務違反」(1点)
ハイビームやパッシングを繰り返す
「警音器使用制限違反」(0点だが反則金はある)
威圧するためなど危険回避以外の目的でクラクションを何度も鳴らす
「合図不履行」(1点)
ウィンカーを出さずに進路変更
など「あおり運転」による取り締まり対象はかなり多いのです。
そして警察庁が積極的に適用するようになっているのが「あおり運転による暴行罪」です。
暴行罪は「暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったとき」に適用される犯罪で、「脅す目的で相手にぶつからないように石を投げる」といった行為も「暴行罪」の適用範囲です。
ケガなどはなかったけど自動車で後方から異常に接近したり、クラクションやパッシングを繰り返されたり、急に前方に割り込んで急ブレーキをかけるといった行為は「脅す目的で相手にぶつからないように自動車を接近させる」行為であり「暴行罪」が成立すると解されています。
※暴行罪=2年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料
妨害運転罪の創設
令和2年(2020年)6月30日に妨害運転罪が創設されました。
これまでは各事案ごとに「車間距離不保持違反」「急ブレーキ禁止違反」や「進路変更禁止違反」などさまざまな規定を組み合わせて検挙してきましたが、妨害運転罪の創設によりこれまでよりも検挙しやすく、さらに罰則も強化されました。
妨害運転罪の罰則は
- 3年以下の懲役又は50万円以下の罰金
- 違反点数25点
- 運転免許の取消し(欠格期間2年、前歴や累積点数がある場合には最大5年)
さらに妨害運転罪に該当する行為によって著しい交通の危険を生じさせた場合
- 5年以下の懲役又は100万円以下の罰金
- 違反点数35点
- 運転免許の取消し(欠格期間3年、前歴や累積点数がある場合には最大10年)
妨害運転罪の対象となる基本の違反は以下の通りです。
- 通行区分違反
- 急ブレーキ禁止違反
- 車間距離不保持
- 進路変更禁止違反
- 追越し違反
- 減光等義務違反
- 警音器使用制限違反
- 安全運転義務違反
- 最低速度違反(高速自動車国道)
- 高速自動車国道等駐停車違反
これまでもあおり運転とされたきた行為が妨害運転罪の対象となる。
そしてこれまでとは違って重い罰則がある。
そういう道路交通法の改正となっています。
追い越し車線って分かっていますか?
あおり運転の様子がドライブレコーダーの普及によって録画されるようになり、ニュース等では事件化したものがよく流されています。またSNSでも「あおり運転」の様子を撮った動画がよく公開されています。
事件化したような「あおり運転」は言語道断ですが、SNSなどでよく上げられている「あおり運転」の動画の中には、被害者側は「追い越し車線」を理解できているのだろうかという疑問がわいてくるものがあります。
高速道路でも一般道でも、片側2車線以上の道路のもっとも右側の車線を「追い越し車線」といい、走行車線を走る車両を追い越す場合に限り走行できるレーンです。
そのほか右折する場合、道路が分岐・合流する場合、標識による指示がある場合などにだけ走行できる車線になっています。
これに違反すると「通行帯違反」(1点)で取り締まり対象となっています。
よく走行車線の車よりも遅い速度で追い越し車線を走行する車がいますが、「あおり運転」をする人間はこの「追い越し車線」の規定だけを盾にして「俺の前をゆっくり走りやがった」「俺の通行の邪魔をされた」と頭に血が上って「あおり運転」に至るケースが非常に多いのです。
必要な時以外は「追い越し車線」を走らないことが、「あおり運転」の被害を受けないようにする重要なポイントになります。
法定速度や制限速度の上限で走っているから問題ない
「法定速度や制限速度の上限いっぱいで走っていれば、周りの車両に迷惑をかけることはないし追い越し車線を走り続けても問題ない」
「法定速度より10㎞/h以上速く走行しているのだから、追い越し車線を走行中に追いつかれても問題ない」
このように考えがちですが実は違うのです。
「追い越し車線」はあくまで「走行車線」の車両を追い越すための車線であり、追越しが完了すれば速やかに走行車線に戻らなければなりません。
また「追い越し車線」を走行中に後続の車両に追いつかれた場合には、「走行車線」へ移動して進路を譲らなければなりません。
さらにこれらの決まりには速度は関係なく、法定速度を上回って運転しているとしても「走行車線」へ戻らなければなりません。
追いつかれたのに走行車線へ戻らない場合などには「追い付かれた車両の義務違反」(1点)として取り締まり対象にもなります。
あくまで「追い越し車線」は追い越しのため・右折のため・分岐や合流のためなどの際にだけ走行できる車線であり、追いつかれた車両の義務として車線を譲らなければならないのです。
進路変更する時される時
自分では安全だと思って進路変更したものの、直近を走るドライバーには「もう少しでぶつかるところだったじゃないか!」と思わせてしまい、「危険な運転」をされたと捉えられて「あおり運転」のスイッチが入ってしまうことも多いようです。
逆に無理な進路変更をされてとっさにクラクションを鳴らした時、「なぜ鳴らされなければいけないんだ!」と「あおり運転」のスイッチが入ってしまうこともあります。
同様に一般道で脇道や道路沿いの駐車場から出てくる車にも同じことが言えます。
こちらが進路変更する時やわき道などから合流する場合、とにかく他の走行中の車から距離を取ることを心がけます。
逆に進路変更してきそうな時やわき道などから出てきそうな時は、アクセルを戻してスピードを緩めるようにします。
誰が「あおり運転」をするのかは分かりませんし、あおり運転をしてくる人は正常な判断能力がないと言わざるを得ません。
ならば危険な状態に近寄らないように、自分で防御していくしかありませんから。
あおり運転をされないようにするためには
もっとも多いのは「追い越し車線」を走行中に煽られるケースです。
高速道路でも一般道でも2車線以上ある場合は、追越し・右折・分岐など以外の時は「追い越し車線」を走行しない。
その他にも
1.ただ前だけを注視するのではなく、後方も含めて周囲の車の動きに気を付ける。
2.周囲の車の流れに乗って走行する。
3.進路変更や脇道などから合流する時は特に走行中の車両からの距離を十分にとる。
4.進路変更や脇道などから合流される時は譲るくらいの気持ちを持つ。
5.車間距離は十分に開けておく。
また高級車・外車・背の高い車(ミニバンなど)などを運転していると気が大きくなり(ハンドルを握ると性格が変わる人)、些細なことでキレて「あおり運転」に発展するケースがあります。
これらの車との車間距離などには特に注意しましょう。
あおり運転をされたら
いろいろと注意をしながら運転しているのに「あおられる」こともあるでしょう。
1.「あおり運転」をされた場合には、まずはその挑発にはのらないこと。
2.あおってくる車とは別の車線へ移動するなどとにかく離れる。
3.安全な場所に逃げ込む。
高速道ならばSA、一般道ならば道の駅やお店の駐車場など人がいる所へ。
4.自動車を止めた後は絶対にドアロックを開けず、車の外へは出ない。
5.110番に通報する。
6.可能であればスマホ等でその様子を撮影する。
また
1.高速道路上での停止は死に直結する恐れがあるので避ける。
2.無理やり停止させられた場合にはシートベルトを締めて、ハザードランプを点滅させる。
3.何があっても車外へは出ない。
4.110番へすぐ通報する。
高速道路の路肩や中央分離帯には「キロポスト」が立っていますので、「〇〇道の114.7付近」とか「〇〇道142.2キロのあたり」のように伝えれば警察は場所を特定できます。
画像はドラぷら・高速道路の『キロポスト』って、どこからの距離なの?より引用させていただきました。
ドライブレコーダーはあおり運転の抑止力にはならない
SNS上はおろかテレビなどでもあおり運転の様子が流されますが、一部は助手席等の人がスマホで撮影した動画なのですが大半はドライブレコーダーでの撮影ですよね。
つまりドライブレコーダーを取り付け、車の後部に「ドライブレコーダーで撮影中」といったシールを貼ったところで「あおり運転」の抑止力には繋がっていないのです。
「あおり運転」をする人は自分が正しいと思っているため、ドライブレコーダーで撮られても平気なのです。
ドライブレコーダーは事故やあおり運転にあったときなどの客観的証拠になるだけだということを知り、まずは「あおり運転」にあわないような運転をするように気を付けることが大事なのです。