Xの投稿に
「新幹線のきっぷを紛失したので、購入時にもらった領収書を見せて改札を出してもらおうと思ったのだが拒否され、さらに乗車区間の料金を請求された」
「新幹線の切符を購入したことは領収書があるので証明できるのに、なぜもう一度料金の支払いを求められるのか意味不明だ」
「クレジットカードできっぷを購入したのでJR側もそのデータを持っているはずだ。そういったシステムをきちんと構築して降りられるようにするべきだ」
きっぷを失くした人が車掌や新幹線改札口の駅員と押し問答となった末に、結局もう一度料金を支払わされたことに対する怒りの声を上げるケースも多いようですが、ではなぜ領収書での乗車は認められていないのかを見ていきましょう。
領収書が意味するものとは
「きっぷを失くしたが廊収書があるのだから購入したことは確実、だから改札から出してくれ!」
この問いに対して鉄道各社が定める旅客営業規則などに…、という説明をすることもありますが、その前に領収書の意味を考えましょう。
領収書はお金を支払った証拠になりますが、それ以上を意味するものではありません。
セルフのお店で食券を買いレシートを受け取って席に着いたが、持っていたはずの食券がない。レシートを見せて、食券を紛失したが食券を買った証拠のレシートはあるから出してくれ!
そう言っているのと同じですよ。
※もし応じる店があるならば訪れたいが、鬱陶しいし関わりたくないから仕方がなく応じただけだと…。
きっぷを失くして領収書を見せて改札から出してもらおうと考えるのは、これと同じです。
領収書はあくまでお金を支払った証拠にはなるけど、目的地まで運んでもらう約束をしたという証拠にはなりません。
その約束をした証拠となるものがきっぷなのです。
ではなぜ領収書だけでは乗車できない、改札を出してもらえないのかと言うと、例えばあなたが乗車券や特急券を買い、ツレの方は入場券だけで改札を入ったとします。
あなたはツレの方に乗車券や特急券を渡して乗車し、目的地の駅で二人そろって下車する時に領収書を見せて、きっぷを買ったことは明確なのだから改札から出せ!
こういう事も出来てしまいますから。
約款による契約
お金を支払い鉄道会社からきっぷを受け取った時点で、輸送契約を結んだことになります。
また同時に約款に定められていることに合意したことにもなります。
鉄道会社における約款は鉄道営業規則をはじめ様々な規則や規程があり、お金を支払ってきっぷを受け取るということは、多くの約款に合意したということになります。
SuicaやICOCAなど交通系ICカードで改札にタッチして乗車する場合も、JR東日本だとICカード乗車券取扱規則に合意して利用しているということになります。
この約款にはきっぷを失くした場合についても定められており、失くしたきっぷと同じ区間・列車・設備の無割引のきっぷをもう一度購入するとなっています。
そんな契約をJRと結んだ記憶はない!
という方も居られるかもしれませんが、
旅客の運送等の契約は、その成立について別段の意思表示があった場合を除き、旅客等が所定の運賃・料金を支払い、乗車券類等その契約に関する証票の交付を受けた時に成立する。
お金を払ってきっぷを受け取った時に契約は成立しているのですが、どうしてもその契約は飲めないという場合には、きっぷを買わずに鉄道を利用しない!ということで対抗するしかないでしょうね。
領収書がきっぷの代わりにならない理由
窓口や券売機で購入するきっぷ類(乗車券や指定席券、特急券など)ですが、どういった位置付けになるのかご存じですか?
きっぷ類は有価証券であるとおっしゃる方もいますが厳密に言うと、
お金払ってきっぷ類を受け取った時点→有価証券
購入したきっぷ類で改札を受けて以降→証拠証券
定期券などのような記名式の物を除いて、きっぷを購入した時点ではきっぷに書かれた区間や列車の決められた座席に座り、券面の目的地まで輸送してもらうことを鉄道会社側に要求できる権利を有するため有価証券です。またその権利はきっぷを持つ人が鉄道会社に主張できます。
きっぷを自動改札に通したり、駅員にハサミやスタンプを入れてもらったりした時点(改札のない無人駅だと乗車した時点)で、そのきっぷを所持している人は券面に書かれた条件(目的地や乗車する列車、使用できる座席など)で運送サービスを受ける権利を有する者だと証明する証拠証券となります。
証拠証券となるきっぷ類を紛失等で持っていない場合、輸送を行ってもらう権利を有しているのか確認ができません。領収書はあくまでお金を支払った書庫で、輸送に関する権利を主張できるものではありません。
下車駅できっぷを失くしたが領収書はあると言っても残念ながら証明にはなりませんので、乗車した区間の運賃や料金(特急料金や指定席・グリーン席の料金など)を支払う必要が出てくるのです。
再収受証明書
乗車中はたしかにポケットにあった乗車券や特急券が、駅に到着して改札から出ようとしたらなかったので、仕方がなく紛失したことを申し出てもう一度料金を支払い、再収受証明書を受け取った。
再収受証明書とは購入したきっぷ類が見つからず、もう一度料金を支払ったことを証明するものです。
もう一度購入したきっぷ類に押印・印字されていたり、専用の再収受証明書の用紙を駅に備えている会社もあります。
家に帰ってカバンを開けると、なくなったと思っていたきっぷ類が出てきた!
いつもはスーツの内ポケットに入れているのに、その日に限ってカバンの内側に入れていたようだ、なんてこともよくあることです。
再収受証明書を発行して1年以内であれば「きっぷを発行した駅」または、「旅行を終えた駅(再収受証明書を発行した駅)」へ、再収受証明書と見つかったきっぷ類を差し出せば手数料を差し引き返金されます。
きっぷを失くしたときに、もう一度払う料金をできるだけ安くしたいと思って、まったく違う区間の運賃・料金を払って再収受証明書を受け取った人はいると思いますが、失くしたきっぷと再収受証明されたきっぷの区間などが違う場合には払戻しには応じてくれません。
きっぷを失くしもう一度支払うのは腹立たしいし、お金も痛い。でもウソの区間を申告していて、紛失したきっぷ類が出てきた時にはもっと痛い目に遭います。
必ず元のきっぷと同じ区間・同じ施設(グリーン車など)を払って再収受証明書を受け取りましょう。
東海道・山陽新幹線だけの特例
東海道・山陽新幹線(東京~博多)発着の指定席・グリーン券をクレジットカードで購入しで紛失(改札内・列車内)した場合で、駅に紛失したことを申し出てもう一度料金を支払って再収受証明書を発行してもらい、
- 紛失されたきっぷが払いもどしされていないこと
- 他に使われていないことが確認できた場合
この二点が確認できた場合には、振込手数料等を差し引いて指定した銀行口座へ振り込むサービスを行っています。紛失したきっぷ類が見つけなくても良いし、見つかったとしても駅へ申し出なくても振り込んでもらうことが可能になります。
このサービスは意外と知られていないようですから、いざという時には活用しましょう。