昔はよく「涼しいうちに宿題をしておくんだよ」なんて母親に言われましたが、近年では早朝から暑いから「涼しいうちに」なんて言えなくなりました。
扇風機だけでも過ごせた時代は過ぎ去り今では
「エアコンの切り時が分からない」「もう3日ほどつけっぱなし」
なんていうことも珍しくなくなってきました。
そうなると今度は電気代が気になってくるのですが、多くの方が「除湿」を使うことで電気代を少しでも安くしようとしています。
はたして「除湿」は「冷房」より電気代は安いのでしょうか?
またネット上でよく飛び交う噂に
「冷房はこまめに入り切りするよりも、つけっぱなしのほうが電気代が安い」
というものがあります。
はたしてこの噂の真偽は?
そこで夏のエアコンの電気代についていろいろと調べてみましたのでぜひお読みください。
そもそも「冷房」と「除湿」の違いとは?
一般的な感覚からいうと「冷房」はお部屋の温度を下げるために電気代が高く、「除湿」はお部屋の湿気を取って若干温度を下げる程度だから電気代が安い。なので
先にお部屋を「冷房」で冷やしておいて、ある程度下がったら「除湿」に切り替えて節電する。
という使い方が一般的だと思います。
冷房
「冷房」はみなさんご存じの通り、お部屋の温度を下げることを主目的にしています。
そして温度を下げる過程で除湿も行うのですが、実は「除湿」よりも除湿の効果が高いのです。
一般的な弱冷房運転による除湿
「除湿」はもちろん除湿を行うことが主目的なのですが、多くのエアコンの「除湿」では弱冷房運転を行っています。
除湿を行う際には「冷房」と同じ原理によって湿度を下げるのですが、温度の低下を緩やかにするために弱冷房運転とするために、湿度の低下も「冷房」より効果が低くなってしまいます。
逆に言えば急激な温度の低下が苦手な方にとって、弱冷房運転による「除湿」は体にもやさしい運転方法だといえますね。
この除湿の方法を「弱冷房除湿」といい、弱冷房ですから「冷房」より電気代も安くお財布にもやさしい運転方法です。
ただし弱冷房ですから設定温度をお部屋の温度より低くしないと稼働できません。
冷房自体が苦手な方の場合、弱冷房除湿による温度の低下も好ましくないかもしれないです。
温度をあまり下げない除湿
梅雨時などあまり気温が高くないけど湿度が高いときに、弱冷房運転による「除湿」を行うと冷えすぎて寒いと感じる方がじつはかなり多いです。
そこで最近のエアコンの「除湿」では再熱除湿という運転方法を取り入れている機種があります。
一般的な弱冷房除湿は除湿の能力自体が「冷房」に劣っているのですが、再燃除湿では除湿の能力を冷房と同等に引き上げています。
そして冷え過ぎを防ぐために、除湿された空気を温めてからお部屋に戻すことにより温度の低下を防ぎながら除湿の能力を向上させているのです。
不快な湿気を取りながらお部屋の温度はほとんど下げないという理想的ともいえる除湿能力なのですが、冷房と同程度の除湿能力と空気を温めなおしてからお部屋に戻すという過程によって、電気代は「冷房」よりも高くなってしまう欠点があります。
一部のエアコンではリモコンの操作で弱冷房除湿と再燃除湿を切り替えられるものがあります。
また弱冷房除湿の性能は年々向上していて、以前より除湿能力が上がっています。
エアコンはつけっぱなしのほうが電気代が安い?
ネット上の噂話として
エアコンは起動時(電源を入れたとき)に多量の電気を消費するため、つけっぱなしのほうが電気代が安くなる
という話がまことしやかに語られています。
実際にはどうなのかをエアコンメーカーのダイキンが実験結果を公表しています。
夏のエアコンつけっぱなし検証!
※以下の文章は「夏のエアコンつけっぱなし検証!」から抜粋しています。
実験結果1
最高気温36.3℃ 冷房26℃設定 風量自動 鉄筋コンクリート14階建て 2階と3階の同じ間取り(14畳)
9時から23時まで「つけっぱなし」と「30分おきに入り切りを繰り返す」実験によると
9時から18時の時間帯で「つけっぱなし」と「30分おきに入り切り」をした場合では、つけっぱなしのほうが電気代は安かった。
ただし35分以上エアコンの電源を切れば、つけっぱなしよりも電気代は安くなります。
日中にすぐそこのコンビニに行くなど、短時間の場合はつけっぱなしに軍配が上がります。
18時から23時の時間帯で「つけっぱなし」と「30分おきに入り切り」をした場合では、30分おきに入り切りするほうが電気代は安かった。
18時以降は外気温の低下によって、エアコンの電源を入れたときの消費電力が日中より下がったようです。
夜間の場合、18分以内にエアコンの電源入れた場合にはつけっぱなしのほうが電気代は安くなるそうです。
実験結果2
最高気温36.9℃ 冷房26℃設定 風量自動 鉄筋コンクリート14階建て 2階と3階の同じ間取り(14畳)
9時から23時までで「つけっぱなし」と実際の生活に即した「エアコンの入り切り」による実験です。
※エアコンを切ったのは11時から12時、14時から14時30分、16時から16時30分、18時から20時です。
この実験結果では「つけっぱなし」より「エアコンの入り切り」を行うほうが約30%ほど消費電力が多くなっていました。
つまり、「つけっぱなし」のほうが電気代が30%も高くなってしまうのです。
エアコンはつけっぱなしでも壊れない?
電気代ももちろん気になるところですが、つけっぱなしにしていてもエアコンは壊れたりはしないのかも気になりますよね。
エアコンに故障や不具合などがなければ、24時間つけっぱなしでも壊れたりすることはありません。
24時間営業のお店のほか、今では一般家庭でもエアコンをずっと切らずに稼働させていることも珍しくはなくなってきました。
もちろん異音がしたり振動が気になりだせば点検や修理、場合によっては買い替えも必要になってきますし、不具合がなくてもフィルターのお掃除など日ごろのお手入れは当然必要です。
そういった点に注意していれば、エアコンを入れっぱなしでも特に問題はありません。
電気代以外も考慮して「つけっぱなし」と「こまめな入り切り」を選択して
ダイキンの実験結果から日中は35分、夜間は18分以下の場合は「つけっぱなし」のほうが電気代は安くなることがわかりました。
しかし14時から14時半までの30分間を見た場合、「つけっぱなし」では室内は26.5℃・湿度69%だったものが、この30分間エアコンを切った場合には室内温度27.5℃・湿度77%と温度も湿度も上昇しています。
30分とはいえ帰宅時に温度や湿度が高ければ快適性は完全に損なわれますよね。
ダイキンもこのHP上で、熱中症にならないように電気代だけではなく、帰宅時の快適性も考慮したうえで「つけっぱなし」と「こまめに入り切り」を状況に応じて使い分ける必要があると実験結果を結んでいます。
1時間以上部屋をあける場合でも、気温や湿度によっては「つけっぱなし」のほうが健康上よい場合もあるでしょう。
電気代も痛いかもしれませんが、熱中症で命の危機を迎えるよりはよいかもしれないですね。
まとめ
「除湿」には弱冷房除湿と再燃除湿があり、エアコンによってはどちらで運転するかを切り替えることができます。
電気代だけで言えば弱冷房除湿が最も安く、再燃除湿は「冷房」より高くなります。
エアコンは日中ならば35分以上、夜は18分以上切るならば「つけっぱなし」より電気代は安くなります。
しかし近年の夏の暑さを考えた場合、外から帰ってきたときの部屋の暑さは尋常ではないですから、電気代だけで判断せずに熱中症予防などの観点からも「つけっぱなし」にするか「こまめに切る」かを選択する必要があるといえます。